2016年12月30日金曜日

グーグルとルイ・アームストロングの意外な関係

二十世紀を代表するジャズミュージシャンのルイ・アームストロングの『この素晴らしき世界(What a Wonderful World)』。この曲の歌詞は、ベトナム戦争から帰ってきた兵士が、自分の家のなんでもない庭や青空を眺めて、幸せを噛みしめる姿を描いたものだと言われています。

I see trees of green,
red roses too.
I see them bloom,
for me and you.
And I think to myself,
what a wonderful world.

I see skies of blue,
And clouds of white.
The bright blessed day,
The dark sacred night.
And I think to myself,
What a wonderful world.

Google創業者ラリー・ページの言葉。
俺はセルゲイ・ブリンと未来についてのバカ話をするのが大好きなんだ。だからこれから行く先の渋滞情報が自動で届けば、余計なことに気をめぐらせずにバカな話を、少しでも長く続けられるじゃないか

この2つの共通点わかりますか?


ページにとって「バカ話」というのはコンピュータが自動化してくれたから生まれた、人間らしい日常だという認識なのです。


これがグーグルの商品に隠されたコンセプト「マインドフルネス」なのです。



グーグルの「マインドフルネス」を理解するために、グーグル・グラスのコンセプトビデオを見てみましょう。



これを見て、視界に通知が出てきて煩わしいデバイス。気にいるのはギークだけ。と批判しているだけでも大切なものを見落としてしまいます。


朝起きて、コーヒーを入れながら壁の時計を見ると、今日の予定が目の前に(グラスに)映し出されます。続けて窓から空を眺めると、天気予報が表示されます。

このシーンはグーグル・グラスの持ち主のインテンション(意図)を先回りしたことを示しています。ユーザーのインテンションや欲求を現実世界の動作・仕草や行動から予測して、ユーザーが必要としている情報を先回りして提示することをグーグルは目指しているのです。


ビデオはまだ続きます。ハムエッグを食べながら、音声入力でメールの返信をします。家を出て地下鉄に向かうところで地下鉄は止まっていると知らされます。するとグラスは徒歩による迂回ルートの地図を表示して道案内を開始します。歩いている途中に犬を撫でるシーンが出てきます。

この何気ないシーンに重要な意味が隠されています。
普段使うことのないルートを歩くときのことを想像してみてください。地図と現在地を確認するのにかなりの手間をかけ、注意力を必要とするのではないでしょうか。

この持ち主は、グラスがインテンションを先回りして次の行動を示してくれるおかげで、周りに注意を払う余裕が生まれ、犬との触れ合いが生まれたのです。音声入力でさっとメールを返信できれば、食事をゆっくり楽しむことができます。

続くシーンでは、近くに友人がいることを教えられて、その友人に会います。短い時間ですが街中で一緒におやつを買って過ごします。終盤には、夕方、ガールフレンドと視界を共有して、グラスの導きで購入したウクレレを弾いて和やかな時間を共に過ごします。


こうして見てみて、何を感じますか。


これがグーグルの隠された哲学「マインドフルネス」です。何気ない日常を味わい深いものにする。余計な雑事はグラスが自動的に処理してれ、生活にゆとりと発見と出会いをもたらし、より人間らしい生活を楽しむことができるのです。




尾原和啓氏の洞察力に感服しました。
ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか? (NHK出版新書 463)
オススメです。






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