2016年12月31日土曜日

アップルの哲学を読み解く

アップルのコンセプトビデオから哲学を読み解いてみましょう。

「Think Different.」はあまりにも有名なアップルの広告コピーです。そのまま訳せば「ものの見方を変える」ですが、この言葉には「誰かと違う自分だけの考えを持とう。そのための助けをするのがアップルなのだ」という彼らの強い共有価値観が込められています。



1997年のThnik Diffarent.から20年弱の時間が経ち、近年のアップルが持つ製品哲学や共有価値観はさらに深みを増しています。

その深みはアップルが新製品のために作るコンセプトビデオに凝縮されています。「iPad Air」のコンセプトビデオ「What Will Your Verse Be?」を見ていきましょう。



注目したいのはタイトルにある「Your Verse(ユア・バース)」という言葉です。公式には「あなたの物語は何ですか?」と訳されてていますが、この言葉に複雑なニュアンスを与えて、とても余韻のある終わり方をしています。これはどんな問いかけを意味するのでしょうか。

このコンセプトビデオを通して、アップルは私たちに「人類は『ヴァース』をつくる情熱を持っているのだ」という共有価値観を伝えているのです。

英語の「verse」に「単一の」という接頭辞の「uni-」を付けると、「宇宙」などを意味する「universe」という言葉になります。これをふまえると、「verse」は人類という一つの宇宙を形づくる一人ひとりの「あなただけの小宇宙」とも言えるかもしれません。

「Think Diffarent.」以降にアップルがたどり着いた哲学。それが「Your Verse」という言葉に込められているのです。

「Thnik Diffarent.」という言葉を思い返せば、かつてのアップルは他人と違う人間になるツールを提供する会社に過ぎず、その先には「では、他人と違うあなたは一体何を考えているのか」という問いがあったはずです。アップルは「私たちはあなたの情熱を拾い上げて、あなただけの『verse』を生きられるよに手助けをします」と背中を強く押します。「iPad」はそうしたアップルの共有価値観を込めてつくられた、表現のためのデバイスだったのです。



アップルの「Your Verse」という哲学は、2015年4月に発売された「Apple Watch」のコンセプトビデオのなかでも探求されています。

まずビデオの冒頭で「make it accessible, relevant, and ultimately personal(世界中の情報がお前に紐づくから、もう世界はお前の一部になるんだし、お前らしくなれるんだぜ)」という言葉が登場します。アップルらしい共有価値観がよく出ています。

特に重要なのはビデオの中盤から終盤あたりで、「ニュアンス・コミュニケーション(Nuance communications)」(≒日本語の「微妙なニュアンス」)という言葉が登場します。この言葉と一緒に「Apple Watch」の相手に自分の鼓動を送れる機能を紹介しています。つまり、身体が躍動するデータをそのまま時計を通じて相手に届けることで、言語を用いない微妙なニュアンスのコミュニケーションが可能になると提案しているのです。





尾原和啓氏の洞察力に感服しました。
ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか? (NHK出版新書 463)
オススメです。






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